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【朝】


いったい、ウチはどうなっちゃってんの？
差し押さえ、差し押さえって。
わたしのベッドまで、差し押さえの札が貼られちゃってるのよ。
もう、信じられない。

わたしは、何も悪くないのに、なんでこんな目にあわなきゃならないの？
狂ってるわ。

借金まみれ。
取立て地獄。
この前なんて、わたしのケータイにまで、取立て屋から電話とかきたんだよ。

このままだと、わたし、変になりそうだわ。
ウチが借金で、どうにもならないってこと、隆志にちゃんと話しておいたほうがいいのかもね。

隆志、こんなわたしじゃ、イヤになっちゃうかな？
隆志に嫌われたら、どうしよう。

こんな生活続けるくらいなら、いっそのことお父さんのこと、殺してしまおうかな。
お母さんなら、きっと協力してくれる。
だって、こうなったのも、みんなお父さんが悪いんだから。

「麗子、入るぞ」
「なんの用？」
縄跳びの紐で、首を絞めて殺しちゃおうかな。

「スマン、麗子。頼むから、バイトしてくれ！」
なに？
なに、頭下げてんの？
それって、本気？

「お父さん、何なの？　バイトなんてできるわけないじゃない。学校もあるし・・・・・・」
「だったら、学校を退学してくれ！　頼む！」

今度は、土下座？
娘に何やってんの？
これが、わたしのお父さん？

「父親として、恥ずかしくないわけ？」
ふん！

シカトして、隆志にメールしよっと。
こういうムシャクシャしてる時は、隆志のさらさらヘアを思い出しながら、 メールするのが、一番よ。

《隆志、おはよう！　今日、会える？》

《いいよ。麗子んちに遊びに行っていい？》

《ウチはダメ！》
もう、隆志ってばすぐに、わたしんちに来たがるんだから。
ウチに来て、差し押さえの札見たら、ドン引きしちゃうよ。

あーあ、髪も伸びてきて、カラーリングしたとこと黒髪の境目が目立ってきちゃったなあ。
だけど、美容室に行く金もないだろうし。

お母さんなら、ヘソクリあるかも。

「お母さん、美容室行きたいんだけど。お金ちょうだい？」
「ウチに美容室行くお金なんて、ないの。・・・・・・あ、そうだ。曽我さんに甘えて、美容室代おごってもらったら？」

「え？　そんなことできないよ」
「だって、曽我さん、男の子なのにずいぶん髪が長いし、それに手入れしてるみたいじゃない？　きっと彼も美容室行ってるはずだから、今度一緒に行って、おごってもらうのよ！」

そんなずうずうしいことできないよ。
・・・・・・でも、もしかしたら、おごってもらえるかも。
今度、隆志に聞いてみよっと。

「麗子、お父さんにもいい考えがあるぞ！」
「もういいよ、お父さん」

「いや、髪形なんか気にしなくてもいいように、坊主にしてくれ！　頼む！」

サイテー！
コイツ、ぜったい殺す！

やっぱ、シカトだわ。
こんな大人どもは放っておいて、
さっさと、学校行こうっと。


【昼】

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