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【朝】

とうとうこの日が来たんだ。
とうとうこの日が。

今日は、とうとうハニーの出産予定日だ。
ああ、待ちに待ったよ。
本当に、本当にうれしい。

ここまでの長く、辛い道のりも、今日の日を迎えられたなら、あっという間だったかもしれない。

結婚してから、ずっと子宝に恵まれなかったからなあ。
親や親せきに会うたびに、孫の顔が早く見たいだとか、まだ子供はできなないのかだとか言われて、ハニーにはずいぶん辛い想いをさせちゃったね。

それから、月１回の不妊治療も、何度も何度もやった。
兆候すらなくて、ハニー、泣いてたっけ。
僕は、そんなハニーのことが心配で、そのたびにガチンコ食堂を休んじゃって、お客には迷惑かけたなあ。
だけど、みんな僕のこと応援してくれた。

諸星さんとこの息子なんか、自分が読まなくなったエロ本を、僕にこっそりくれて、これ読んで頑張ってくださいって励ましてくれた。

好意はありがたいけど、内容があんまりにもマニアックなエロすぎて、役には立たなかったけどね。
だけど、みんなありがとう！

｢うふふ。ダーリン、どうしたの？　なんだかうれしそう｣
あ、ハニー、目が覚めたんだね。
｢おはよう、ハニー。のど乾いてないかい？｣

｢ありがとう。・・・・・・少し｣
｢じゃあ、お水持ってきてあげよう｣
｢いいよ。自分でできるから｣

｢ハニー、いいんだよ。僕は君に水をあげたいんだ。今日という日を迎えられたんだから、僕にもなにかやらせてくれ｣
｢そう。じゃあ、お願いしようかな｣

｢ねえ、ハニー、男の子と女の子、どっちだろう？｣
気になるんだ。
僕は妊娠がわかった時から、気になって仕方ないんだ。
だけど・・・・・・。

｢だから、山田先生に教えてもらえばよかったのに。ダーリンが絶対に前もって知りたくないって言うんだもん｣
｢そうさ！　だって、生まれてきた時の喜びのボルテージが違うと思うんだ。ちんちんがついてる！　とか、ついてない！　とか｣
｢あはは。面白い｣

あとは、名前だよな。
小暮って苗字にピッタリの名前。

何がいいんだろう？
結局、今日まで決められなかった。
近所の占い師にも見てもらったけど、なんだかしっくりこなかった。

やっぱり、自分で決めないとダメなんだよな。

それにしても、生命の神秘だよ。
男には、絶対にできないことだもの。
スゴイぞ、ハニー！

もし、僕が妊娠したら、どうなるんだろう？
多分、キンタマ袋に胎児が入ることになるんだろうな。
キンタマ袋が、こーんなにデッカくなって・・・・・・。

子供が動くたびに、激痛が走っちゃうな。
恥ずかしくて、外も歩けない。
いや、男が子供を産むっていう環境が当り前だったら、別に恥ずかしくもないのか？

で、どこから産まれるんだ？
もしかして、尿道を通って、チンチンの先っちょから出てくるのか？！

ちんちんの先端が裂けて・・・・・・うわぁあ！
死ぬ！
絶対、死ぬぞ。

｢どうしたの、ダーリン。顔色悪いわよ｣
｢・・・・・・あ、ああ、なんでもないよ｣

｢ダーリン、食堂の仕込み、そろそろしなくていいの？｣
｢いいんだよ。僕はハニーのことが心配だし、それにもし、僕がガチンコ食堂で食事を作ってるときに産まれたら、大変じゃないか｣

｢大丈夫よ。そんなにポン！　って産まれたりしないから。産まれそうになったら、連絡するから、ね？｣
｢ああ、わかったよ。じゃあ、山田先生にも言っておくよ。すぐ来ますって。じゃあ、いってきます｣
｢いってらっしゃい｣

ハニー、がんばって！
もう少しだよ。


【昼】


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