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【朝】

【昼】


ここが、真紀の言ってたトコね。
「マテリアルスタイル」
どうでもいいけど、なにこの看板。
「島唯一のファッションセンター」
「オシャレなあなたにぴったりのアイテムがきっと見つかるはず！」

どうしてこういうキャッチコピーが思いつくわけ？
ダサダサじゃん。
なんか、入るの恥ずかしいわ。

外から、真紀がいるかどうか確認してから、入ろうっと。
あ、いたいた。

なに？
真紀ったら、またあのワンピ着てる。
この前もあれだったじゃん。
まったく〓。

「おはよー、真紀。久しぶり〓」
しかも真紀、なんか生ゴミくさい。
どうして？

「チエ、遅すぎ〓。待ったよ〓」
「ゴメンゴメン。待ってる間に何買った？」
「まだ買ってないよ。グルグル見てただけ。だって、チエからアドバイスもらおうと思ってさ」
やっと、その気になってくれたか。
まあ、アイドルの生きたファッション・アドバイスがじかに聞けるんだから、真紀も幸せだよね。

「そっかそっか。よし、任せておいて！　真紀を大変身させたげる」
って、言ってもこの店じゃ、たかがしれてるけどね。
だけど、こういうダサダサの店でも、オシャレなものを見つけ出せなくちゃ、アイドル失格よ。

「チエさあ、最近テレビに出てないね」
ギクッ！
何が言いたいわけ？
たしかに、春の番組改変で、「島でしましょ！　後藤みづきのラブランド・アイランド」は、放送終了になったけど、そういうことズバッと言うか？
もう少し、気を使えよ。

「今ね、テレビより、ほら、グラビア中心でやってるからさ」
「へえ、そうなんだあ」

「・・・・・・くんくん。くんくん。ん〓！　うひょひょ〜。いいフレグランス！　あ、思わず声出しちゃった」

「キャッ！　なに、この男！」
怖い怖い！
いつの間に、背後にいたの？
しかも、鼻が肩に当たってる！！！

「すみません。あんまりいいフレグランスだったから、興奮しちゃって・・・・・・って、あ！　後藤みづきだあ！　す、すげえよ、スクープだよ！　いつもお世話になってるグラビアアイドルの生ニオイ嗅いじゃったあ！　うひょひょ〜」

「キ、キモすぎる！」
「チエ、離れたほうがいいわ！」
「う、うん」
変態じゃないの。
スケベ！

「チエ、見て、さっきのヘンタイ、今度はマネキンの胸揉んでるわ！」
「頭おかしいんじゃない？」

「すみません。後藤みづきさんですか？　さっき、あそこのヘンタイがそう叫んでたんで・・・・・・」
「あ、はい」
オフは、勘弁してほしいなあ。

「もし、よろしければ、サインとかいただけますか？」
サイン？
どんなサインだっけ？
最近、サインとかみんなサカエにやらせてたからなあ。
ま、テキトーでいっか。

「システム手帳しかなくて、すみません。・・・・・・ここにお願いします。えーと、理沙ちゃんへって、書いてください」
「リサって字、どう書くんですか？」
難しい漢字だけは、ヤダよ。

「あ、カタカナでもいいです」
ラッキー。
リ・サっと。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます。理沙は娘なんですけど、後藤みづきさんに憧れてるんです！　将来はアイドルになりたいって」
「夢は必ず叶いますよ。頑張ってくださいネ！」
「はい！」

「やっぱ、後藤みづきは知名度高いわ」
「でしょ」
「あんまり人がいると、チエもせっかくの休みが台無しになりそうだから、カフェにでも行って、ゆっくり話そうか。チエに言わなきゃいけないことあるし・・・・・・」
「なによ、そのもったいぶった感じ。もしかして、結婚？」
「そんなんじゃないわよ」

なんなのよ！
じれったい。
真紀は昔っから、もったいぶるクセあるのよね。