あるスパイの物語(『妄想銀行』より)
2010-12-04


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スパイというものは、常に孤独との闘いだ。
自分の存在を消し、まるで違う誰かになる。
強烈な愛国心と、忠誠心が必要となり、しかもそれを、表に出すことは許されない。

命を危険にさらし、あらゆる手段を講じて、極秘情報を入手する。
それは、並大抵の精神力でできるものではない。

どんなに緻密に計画が練られたとしても、その任務が、必ず成功するという保証は、どこにもないのだし、もちろん、失敗に終わる確率の方がはるかに高い。

彼の名前は、プレジデントA。
もちろん、本当の名前じゃない。
コードネームだ。
彼が、世界でもトップクラスのスパイであることを知る者は、少ない。

彼のもたらす極秘情報や、軍事機密が、ある時は世界経済を混乱させ、ある時は戦争の引き金となった。
その裏には、いつも彼のスパイ行動があり、しかしそれは誰にも気づかれなかった。

彼は、いつしか社会的な地位を得て、絶大な信頼も寄せられるようになった。
そして、彼が入りこんだ組織は、彼のことを完全に信用しているようだった。
これで、作戦の第1段階は成功だ。

そんな彼に、秘密諜報本部から、第2段階の指令が届いた。
それは、とても困難な任務のように思われた。
だが、今回も、彼は鮮やかに任務を完遂することだろう。

彼は、厳しいセキュリティを難なくクリアし、部屋に入ると、分厚いファイルに閉じられた極秘情報を入手した。

「これで、よし」
と、その時だ。
誰かが、部屋のドアをノックする。

彼は、不意を突かれ、ギクリとした。
しかし、ここで狼狽しては、計画が全て台無しになってしまう。
彼は、椅子に座りなおすと、大胆にもこう言った。
「・・・・・・入りたまえ」

ドアがゆっくりと開き、勲章をいくつもぶら下げた軍人たちが、ドヤドヤと部屋に入って来て言った。
「執務中すみません」
「いや、いいんだ」

「我々が極秘裏に進めてきた、国家的軍事機密に関する案件へ目を通していただきたいのです。・・・・・・大統領」
「わかった。・・・・・・詳しく説明してくれ」

彼の名前は、プレジデントA。
もちろん、本当の名前じゃない。
コードネームだ。
彼が、世界でもトップクラスのスパイであることを知る者は、少ない。


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